見捨てられ不安
境界性パーソナリティ障害の人は、二極思考や激しい感情や衝動的行動が相重なって、対人関係が安定しません。他人を心から信じることができず、人との絆を築きにくいのです。それと同時に、相手に見捨てられることへの不安(見捨てられ不安)が強くなることも特徴の1つです。
同じ人に着いたり離れたりを繰り返す
境界性パーソナリティ障害の人は、相手にされた些細な言動で落ち込んだり、気に病んだりしがちです。なかば、被害妄想的に傷つき、怒りを覚えます。そして、怒りにまかせて相手を攻撃します。それでいて、攻撃をすることで自分自身もおかしくなってしまうのではないかと恐れを感じます。そのため、相手と親しくなっても、次第に親しくなりすぎることへの不安や怖れを感じます。そして、相手と距離をとるようになります。
相手と距離をとると、今度は見捨てられ不安を感じるようになります。相手を強く求めるようになり、激しい行動を取るようになり(下述)、親しくなろうとします。
しかし、関係が戻っても長続きせず、また、相手を攻撃するようになり、相手と距離を取るようになります。
この繰り返しが、境界性パーソナリティ障害の人には見られます。同じ一人の人に対して、手のひらを返したように態度が反転するのです。
見捨てられることへの不安にかられて激しい行動を起こす
境界性パーソナリティ障害の人は、相手に見捨てられることに対して、強い不安を感じます。相手に見捨てられないように、極端な行動を起こすこともあります。
何十回も電話やメールをしたり、応じなければ夜中に押しかけるといった強引な行動に及ぶ場合もあります。ストーカー行為や暴言、暴力などに及ぶことも珍しくありません。
また、不安が高じて、うつになったり、パニック発作を起こしたり、体調を崩したりしてしまうこともあります。
さらには、手首を傷つけたりするなどの自傷行為をしたり、自殺するなどと言って相手を脅したりしてしまうこともあります。
「見捨てられた」のは思い込みであることもよくある
境界性パーソナリティ障害の人は、見捨てられ不安を感じますが、それが思い込みであることもしばしばあります。例えば、電話に1回出なかったり、メールの返信が遅かったりするだけで、見捨てられたと感じるのです。これは境界性パーソナリティ障害の人が持つ過敏な神経がものごとを大げさに捉えてしまうからです。
不安定な対人関係の原因
見捨てられ不安の原因は、環境的要因である見捨てられ体験によるところが大きいと考えられています。=>境界性パーソナリティ障害の原因
また、見捨てられることへの不安の背景には、自分自身に対する確信の無さも考えられます。人は、幼児期には母親との一体感を持っていますが、成長とともに親離れし、反抗期を経て、自分の価値観で人と付き合うようになります。境界性パーソナリティ障害の人には、こういった過程がうまくいっていない人が多いのです。
【体験談】見捨てられ不安と闘う日々
家族に見捨てられ不安の症状がある方の体験談を紹介します。
見捨てられ不安の症状は境界性パーソナリティ障害の代表的な症状だと思います。
精神的に不安定になり、ささいなことで不安な気持ちが強くなり、相手に対してその気持ちをぶつけてしまいます。ちょっとすると落ち込み、また相手に甘えるようになります。こんなことを繰り返しているうちに自分も相手も憔悴しきってしまいます。
実際に私の家族が境界性パーソナリティ障害と診断され、本人も私も見捨てられ不安に悩まされています。
私が仕事などで忙しい時にどうしても本人を一人にしてしまうと、本人が見捨てられ不安を感じてしまい、それで暴れたり感情の起伏が激しくなったりしてしまいます。普段から落ち着きがなくなり、うかつに一人にさせることすらできない状況になってしまいました。
精神科には1週間に1度通院しています。
処方してもらった薬を飲んでいるので、ある程度は心を落ち着かせることができます。しかし、境界性パーソナリティ障害では、突然酷い不安に感じることがあります。そういった時に私や他の家族、周りにいる人に対して攻撃的な感情をぶつけてきたりします。
このように気持ちのコントロールが難しい状況が続いています。それでも私は家族として、いつか良い状況になると信じながら本人を支えていきます。
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